ヨシオは流れる涙を拭きもせず、声を震わせ喘ぐように言った。
「…心底…変わりたいんです、…すべてをゼロに戻せるんなら。
…まるで、出口のない真っ暗なトンネルを進みつづけてるみたいで…」
しばらく間をおいてコウジが言った。
「…そうか。実は大事な話っていうのはそれだ」
「えっ?」
「オレは今日社長に呼ばれてお前のことを聞かれた。
何でも、お前んとこの部長が、あんな不良社員は即刻クビにしたほうが会社のためだって、
息巻いて社長に進言して来たらしい」
「そうですか…」
「でも社長は、本人に真相を確かめもせず、
軽々しくクビだの何だのと口にするなって部長を一喝したそうだ」
「………」
「で、お前と親しくしてるオレが呼ばれたってわけだ、実際のところどうなんだって。
オレは知ってる限りのことをすべて話したよ。
聞き終えた社長は、お前に再起のチャンスを与えてやりたいってさ。
だから、オレがその手助けを頼まれたんだ」
「…社長がそう言ったんですね」
「ああ。お前をこのまま終らせたくないってな」
ヨシオは、真っ暗なトンネルの先に、
わずかだが小さな光を見い出した気がした。〈つづく〉
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